想像を超えた《何か》

人間というのは本来、単純にできているような気がする。

例えば──子供の頃、大人という存在は、強大で複雑で、謎な存在だった。自分が三十歳になるなんて、全く想像も付かなかった。

そして──いざ、大人、というものになってみると──なんてことは無い。少し偉そうにしている、疲れた子供だ。



そして、人間が作った物もまた、単純であることが多い。

例えば──パソコンは多くの人にとって、複雑怪奇な、謎の匣だろう。しかし、細部に至るまで「ヒトの作りしモノ」であることは間違いない。

CPUやRAM、HDDは脳の模造品でしかなく、プログラム言語は少しばかり制限の多い《コトバ》でしかない。──というのは暴言だろうか。



何が言いたいかというと、どこまで行っても「人間の想像の限界を超えていない」ということ。そして、人間にとって理解しやすいように単純化されている。──それは、人間が作ったものだから当たり前だが。



例えば──《四次元》がどんな世界か、知らない人に説明できる人は少ない、と思う。

《一次元》を真っ直ぐな線を引いて、《二次元》で矩形を書いて、《三次元》で立方体を描いて──と説明できるとしても、《四次元》は「絵にも描けない」。それは、紙の上は《二次元》だから、当たり前だ。

──というような、人間の想像を越えた物がいつの日か現れないか、かなり以前から楽しみに待っている。人間なんかにはとうてい理解できない、《何か》を。