脳内彼女不在
そういえば最近、妄想をしなくなったなぁ、と思った。
子供の頃、母子家庭で夜は母親が仕事に行くので、自分の友達は本だった。母親が、寂しい思いをさせていると感じてか、本だけはいつでも買ってくれた。
いつ頃からか、小説を読むようになった。
小説を読むようになってから、夜、ベッドに入ってから楽しみが増えた。
寝るまでの間、自分が創った世界で冒険するのだ。もちろん、自分の脳内で。
その頃読んでいた小説やマンガ──『エルリック・サーガ』『指輪物語』や『クリスタル・ドラゴン』など──、またはゲームブックの影響で、ファンタジィの世界で数人組の冒険者が財宝を求めて──という話が多かった。
御多分に洩れず洋風一辺倒だったが、ある時期、
「いや、逆に和風の方がカッコよくね?」
と考えて、和風ファンタジィの世界観を構築しようとしていた。
あの頃の自分は、どこへ行ったのだろう?──そういえば、自分は小説家になると信じて疑わない時期が、一瞬、あった。
いま、例えば《脳内彼女》みたいな妄想すらできない。──いや、エヴァにハマっている時期(10年前)ですら、《妄想の中のアスカ》は脳内にいなかったなぁ。
「年を取ると頭が硬くなる」ということだろうか?何だか、寂しい。