スクリーン・トーンの切れ端くらいは
スクリーン・トーンの切れ端くらいは
ビールでも飲もう。
──会社からの帰り道、唐突に思いついた。
それにしても、ビールという奴は「とりあえず」とか「でも」とかが頭や尻に付くのだな。
──というのは、いま、思いついた。
カミソリの刃が鈍ってきたので、近くのスーパで、ビールと一緒に買った。
レジは三ヶ所あったが、どこも込んでいた。
一人だけ若い女性の店員。──迷わずそこへ。
百円玉が足りなかったので、千円札を二枚出した(そういえば二千円札ってどうなった?)。
おつりは、「801円」だった。
801──円。
──ふと、女性店員の口の端が少し上がった、気がした。
気がしただけだろうか? きっと、そう。
きっとそうだ。
買い物袋を受け取りがてら、少し、観察。
──髪型の「手がかからないことを最優先したストレート・もちろん真っ黒」な感じ──
──エプロンの下は得体の知れないブランド・というかメーカのTシャツ──
──やや伏し目がちな一重・あるいは奥二重の目──
──もちろん、フレグランスの香りなどしない──
あらゆる可能性を考慮する、という余地がないくらいに「ある可能性」を指し示しているような気がした。
気がしただけだろうか? きっと、そう。
きっと、そうだ──
──もう少し観察したら、服や髪の毛にスクリーン・トーンの切れ端くらいは見つかりそうだったけど。
※この日記はフィクションであり、実在の人物・団体・事件などには、一切関係ない可能性がありますが、↑の子、見てたらメッセージをどうぞ